第29章 ラズベリーscene4
取り残された俺は、新聞をテーブルに置いた。
青えんぴつがコロコロと転がった。
言いようのない不安に襲われる。
俺はすぐに着替えて家を出た。
出る直前に翔ちゃんが洗面所から顔だけだした。
「どこいくの?智くん」
「ちょっとコンビニ。タバコ」
「ん。わかった」
そういうと顔を引っ込めた。
泣いていた。
エントランスから外にでると、もう空は鮮やかなオレンジになっていて。
急いでマンションの隣にある森に飛び込んだ。
何個もある小さい赤い鳥居をくぐった。
小さな祠の前に行くと、手を合わせた。
お願いします。
翔ちゃんの気持ちが俺にわかるようにしてください。
どうか、翔ちゃんの不安を俺に分けて下さい。
顔を上げると、両サイドに居るきつねを見た。
ここ、お稲荷さんなんだよな…
でも。
お稲荷さんでも祈らずには居られない。
俺にはなんで翔ちゃんが苦しんでいるのか、わからない。
だから聞いたけど、教えてくれない。
もう八方塞がりだった。
だからもう神様に頼るしかない。
こんなこと、やったこともないのに。