第5章 7月
―1年生とテスト前日―
テスト週間の土日はどちらか1日部活が休みになるみたいで、私たちは期末テスト前日の日曜日、芝山くんの家に集まる事になった。本日の教科は数学らしい…。
予定時間の20分前に待ち合わせの場所の駅前について、とりあえず目立ちそうな時計の下を確保した。
芝山くんにメールを送るとすぐに返事が来た。
《僕も今駅に向かってる!二人ももうすぐ着くみたいだよ!》
部活以外で休日に誰かと会うなんて初めてだから、私は少しそわそわしていた。
まず先に現れたのはリエーフだった。
背が高いから人混みでもよく目立って見つけやすい。
こちらの位置を知らせる為にヒラヒラと手を振る。
リエーフもすぐに私に気付くと、長い足でこちらにずかずかと歩いてきた。
そしてそのまま肩をガシッと掴まれる。
「鈴…なんで上下ジャージなの!?俺鈴の私服楽しみにしてたのにッ!」
言われてみるとリエーフはネイビーの半袖シャツに七分丈のチノパン、胸元にはシルバーのネックレスが光っていた。
「…リエーフは、モデルみたい…だね」
履いてる靴から持ってるトートバッグまで、服屋のマネキンみたいに全部おしゃれで、ジャージ姿の私が隣に並ぶと確かに不釣り合いかもしれない。
巨神兵とか書いてあるTシャツ着てるから、てっきりセンス無いのかと思っていた。
「だろ?どう、俺に惚れた?」
そう言って自然な動きで私の髪に手を伸ばした今日のリエーフは、なんだか甘くて不思議な匂いがする。
少し考えて私が首を捻ると「冗談だよ。真剣に考え過ぎ」と笑ってデコピンされた。腑に落ちない。
「おーい!灰羽ぁ!鈴ッ!」
「遅くなってごめんね!」
反対の出口に出てしまった犬岡くんを迎えに行っていたようで、時間ぎりぎりに二人がやってきた。それから途中のコンビニでお菓子やジュースを買って、みんなで芝山くん家のマンションに向かった。
ちなみに犬岡くんも芝山くんも部活に来る格好と大差ない服装で、なんだかリエーフだけおしゃれで浮いていた。
「なんでオマエら休みの日に女子と会うのにそんな恰好なんだよ!」
ぽかーんとする犬岡くんと、苦笑いの芝山くん。
そのやり取りは少し面白かった。