第4章 6月
「お前らいくら貸し切りっても、騒ぎ過ぎだぞ」
黒尾が主将らしく咳払いして注意する。
ちなみに彼もついさっきまで床を転げ回って笑っていた。
「違うんス、今のホント俺じゃないんスよ!」
「うるせえ!大体オマエら2年は少しくらい悲しそうなフリしろよ!俺ら最後のインターハイだぜ?」
山本のモヒカンをわしゃわしゃしながら黒尾は言う。
「…でも」
それまで一人黙々とゲームをしていた研磨が顔を上げ、ぴしゃりと言った。
「行くんでしょ、春高」
『次はお前たちのバレーで勝て』
今日の試合後、監督は"次"と言う言葉を選んだ。
黒尾、海、夜久は顔を見合わせてニヤリと笑う。
こんな所で終わらせる気は誰一人として無い。
「今日の試合に満足してる奴なんかいねえよな。負けて悔しい、ミスが悔しい、自分の力の無さが悔しい。でも悔しいからこそ俺たちはまだ強くなれる」
黒尾に皆の視線が集まる。
「……春高、狙うは全国
次は俺たちのバレーで、全国優勝だ」
歓声とも雄叫びとも言えない男たちの声が響いた。