第3章 5月
―灰羽リエーフとあだ名―
「…ッ!リエーフ、てめえふざけんなよ」
「え、猛虎さん、ちょ、なんスか!?」
GW明け一発目の部活前。いつものようにダラダラと着替えながら笑い声を上げていたバレー部の部室に、それは突如起きた。
他の部員に少し遅れて灰羽リエーフが部室に入ってきた瞬間、響いたのは山本猛虎の怒号。
そのまま入り口で固まるリエーフにズカズカと近づいていき胸ぐらを掴んで睨みつける。何事かと皆動きを止め、その場はしんと静まり返る。まさに一触即発かと思われた。
「オマエさっき……
女子に告られてただろおおおおおおお!しかもおおお、巨乳のおおおおお!」
黒尾鉄朗はぶひゃひゃひゃひゃと笑い、海伸行は頭を抱え溜め息をつく。福永招平と孤爪研磨は無表情且つ無言で着替えを再開し、1年もおっかなびっくりそれに習った。
「ちょ猛虎さん、見てたんスか?」
「あんなところで告白されるオマエが悪い」
「それ俺悪くないっスよね!?黒尾さんッ、笑ってないで助けて!」
頃合いを見て「もうその辺にしておけ」と海が間に割って入る。
やっとのことで開放されたリエーフに、犬岡走がパンツ一丁のまま詰め寄る。
「なあなあリエーフ付き合うの?相手はどんな子?カワイイ?」
「ちょっと、犬岡くんっ…」
脱ぎ捨てたられた制服のズボンをすかさず拾いあげる芝山優生も、彼を止めつつ何だかんだで気になる様子だ。
「え?断ったよ」
灰羽リエーフはケロリと答える。
「…そうだな、顔は…そこそこ可愛いかったかも。2年のセンパイで、名前は…うーん、覚えてないや」
「ジィーーーザーーーッス!!!」
山本は両手で頭を掻き毟りながら、そのまま器用にブリッジした。