第3章 5月
部屋に戻るといつも通りのやかましさで、俺は何故か安堵した。
「俺は居ない方にハーゲンダッツ」
「えーっ、俺は居た方がうれしいからいる方で!」
「僕もですっ」
「バカヤロウ!鈴さんが居残りなのに、向こうにだけ居たら悔しいだろうが!!」
何やら山本が一年相手に賭け(ハーゲンダッツ)を吹っ掛けてる様だった。こういう時奴の予想は十中八九外れるから、まあ放っておいて大丈夫だろう…と思った矢先。
「その時は覚悟しとけよ、烏野ーッ!」
「山本うるせえ!」
外に向かって叫び始めるから油断ならねえ。
「おい、研磨はどっちだと思う」
反省してんだかどうだか、山本は唐突に研磨へ話を振る。
「別にどっちでもいい…でも」
ふっ、と顔を上げた研磨は新しいゲームを前にした時の表情をしていた。
「ちょっと楽しみだよね、烏野と試合」
(オイオイ…)
さっきのといい、今といい、研磨は何か悪い物でも食べたんじゃねーか?
それとも明日は雪が降るのか?
「ヤル気無し男の研磨が試合を楽しみにしているだとー!?」
俺の頭は混乱するばかりで…。
「山本そんなに元気ならテメーだけ練習増やしてやろうか」
「スッ、スンマセン…」
合宿一日目の夜は更けていった。