第3章 5月
何だかんだで、リエーフはとても真面目に練習に取り組んだ。そしてそうなると当たり前のことだが、先にバテたのは私だった。
(動くと、やっぱり暑い…)
体育館の隅に座り、リエーフの下手くそなジャンプサーブを眺めていた。試合で見た動きをすぐ真似したがる所が昔の鉄朗みたいで少し和んだ。
ジャージの胸元を掴みパタパタと動かし、中に涼しい空気を循環させる。
その間に空いてる方の手で、私は鉄朗にメールを作成した。
(リエーフとスパイク練習してるんだけど、どうやったら上手くなるかな?…っと)
送信ボタンを押すと、ボール拾い中のリエーフと目が合い駆け寄って来た。
「鈴、もっかいトス上げてっ!」
引っ張られるままに立ち上がると、そのままネット付近まで連行された。
次はクイックでも打たせてみようかと、リエーフに先に助走を始める様に伝える。
走り出したリエーフに到達点を合わせて、さっきより直線的なトスを上げる。
ばすっ。タイミングは合わなかったがリエーフは運動神経のみで、ボールを相手のコートに押し込んだ。
(やっぱり、合わせるの少し難しい…)
「鈴っ!!やっぱお前すげえ」
嬉しそうに目をキラキラさせて近寄ってくるリエーフは、感動屋さんなのかも。