第2章 4月
「……試、合も、練習も…
…い、入れて…もらえな、かった…」
震えそうになる手を、反対の手で抑える。
そう。私にはポジションなど無かったのだ。
許されていたのは、ボール拾い。それと体育館の隅で壁に向かい、ただひたすらオーバーハンドの練習。
海さんの方を向けないでいると、さっきまでの優しい相槌の代わりに「すまない」と一言の謝罪が返ってきた。
「飲み物を買ってくる」
海さんは立ち上がるので、私は下を向いたまま頷いた。
(海さんも…私と話すのは、楽しくないのかな)
私は鉄朗やおばさんみたいに面白い事を言えない。
気にしている事ではあるが、どうしたら改善するのか見当もつかない。