第6章 7月下旬
その日の練習前に谷地仁花は約束通り月島蛍に謝った。
結果としてそれはうまく行かなかったのだが、敢えて二文字で表すとしたらこうだ。
撃沈。
谷地は二人の事を思い、やんわりとでも言葉を尽くして和解する様にと勧めだのだが、そんな思いは敢え無く月島の舌打ちに打ち消されて。
「それって谷地さん関係なくない?」
「でも鈴ちゃん凄く良い子だしっ…」
そこで月島は谷地の言葉を遮り、言い放つ。
「良い子って何?免罪符なの?」
絶対零度の笑顔で圧を掛けてくる目の前のチームメイトと繊細な心を持つ彼女の友人とでは、水と油の様に交わる事は有り得ないのかもしれない、と。
谷地仁花はこの戦いに勝算が無いという事を悟った。
合宿2日目の昼過ぎ、森然高校の父兄から差し入れで頂いたスイカを切りながら、谷地は鈴に謝った。
「私、何もできなかったよ……本当に、ごめんね」
力無くしょんぼりとする谷地に鈴は気にしないで、と首を横に振る。
これは自分で起こした問題なんだから自分でなんとかしないとと思い直しながら、出るのはただ溜め息だけだった。