第5章 7月
ふと、立ち上がった拍子に鈴の口元にいちごのソースが付いているのが見えた。
無意識の内に口元がニタッと緩むのを感じた。
「…ったく、甘いモンばっか食って。夕飯食えなくなるぞ」
他の奴らに見せびらかす様にそれを指で掬い取って、わざとゆっくりペロリと舐める。
研磨とリエーフから向けられた悔しそうな表情を見て、束の間の優越感に浸る。
「何してるんスか、黒尾さん!」
「リエーフ、まさか知らないのかァ?いとこ同士なら結婚できるって法律で決まってるんだぜ?」
いつか言われたセリフをリエーフに返す。
兄貴っていう便利な魔法の効果は切れた。
俺にとっちゃ今がスタートラインなのかもしれない。
「言っておくが、鈴は誰にも渡さねえから」