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【ハイキュー!!】陽だまりの猫

第5章 7月




「リィエーーフゥゥゥ!!!」

「ぎぇッ!?」


そんな状況を打開するかの如く、夜久の強烈な飛び蹴りがリエーフの横腹に炸裂する。
勢いに押された鈴は犬岡が受け止める。

一方クリーンヒットを食らって倒れ込んだリエーフが顔を上げた眼前には、冷たい表情をした孤爪研磨がいた。


「鈴のことイジメたら…許さないから」

リエーフを睨みつけ言う。
逆光を受け、暗闇に佇む猫の様にギラリと目を光らせながら。


しかし彼は怯まなかった。
それどころか至極真剣な表情をしていた。


「孤爪さん、何か知ってるんですよね?鈴はいつから…いや、なんでこんな恰好してるんですか?」


一見バカの様に見えるが、リエーフの勘はいい。

彼は幼馴染みや兄妹という名目で取り繕ってきた研磨達3人の違和感を感じ取っていたのだった。








以前研磨は黒尾へいつまで鈴の過去を隠し続けるのか問い掛けた。


『その時が来たら俺から話すから、それまで研磨も何も言うなよ?』


なんでも器用にこなす黒尾にしては珍しく、それは問題の先送りという逃げの一手だった。

義理の兄妹なんてことがあんまり広く知れ渡ると、無遠慮な奴が鈴の過去を詮索したりするかもしれない、と最初の頃は真実を隠す事に研磨も賛成だった。


でもバレー部に入って鈴の周囲に人が増えた。

最近の黒尾は兄というポジションに固執し、自分は鈴にとって特別な存在なんだと他の奴らを遠ざけているようにしか見えない。

研磨はそれが狡いと思った。





「教えて下さい、鈴の事」


リエーフは悔しそうな顔を浮かべている。

研磨はわざと諦めたようにゆっくり溜め息を吐いた。


「……わかった。でもそれは俺じゃなくてクロが説明する。今日の部活後、時間あるよね?」



わかりました、と晴れない顔でしぶしぶと引き下がるリエーフ。

犬岡、芝山にも視線を遣ると二人も頷いていた。



踵を返し歩き出すと、研磨は誰にも聞こえない声で一人呟く。


「残念、クロ。時間切れだよ…」




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