第5章 7月
「手伝ってくれてありがとうございます、えっと…」
言葉に詰まる仁花ちゃんへ日向くんが助け舟を出す。
「あ、こっちの金髪が音駒のセッターやってる研磨で、デカいのが犬岡だよ!」
研磨は恥ずかしそうに無言で、犬岡くんは「チワっす!」と元気に頭を下げる。
「んで、俺は日向翔陽!キミは音駒のマネージャーさん…だよね?」
私は遠慮がちに頷く。
「鈴っ、こう見えて翔陽の速攻はスゲェんだぞ!ギュン!ブワッ!て感じで!次もまた止めてやるからな!」
「こう見えてってなんだよ犬岡!次はぜってぇ負けないっ!」
「俺だって攻撃も負けないぜ!」
「☆△×○♡!」
「×△〒○◎!」
無言のまま部屋に戻りたそうな雰囲気を出している研磨を気にも止めず(というか気付いてない?)横で二人は楽しそうにワイワイ言い合っていた。
「私たちお風呂まだだし、そろそろ行こっか?」
犬岡くんたちのやり取りを少し眺めた後、苦笑いで切り出した仁花ちゃんに私も頷く。なんだか眠たくなってきた気がする。
「谷地さん、鈴さん、また明日ね!」
手を振る日向くんは名前の通り、眩しいくらいの笑顔だった。
「俺明日、音駒と戦うの楽しみだな!」
後ろから聞こえてきた日向くんの声に犬岡くんがなんて答えるのか気になって、私はこっそり振り返る。
「オウ!俺も凄いけど、リエーフも凄いからなッ!」
明るく言う犬岡くんの横顔は、また寂しそうに笑っていた。