第5章 7月
―黒尾鉄朗と妹の行方―
烏野の奴らの案内をしている途中、さっきまで座っていた日陰に鈴の姿が無い事に気づいた時から嫌な予感がしていた。
烏野の主将である澤村に駆け足でゲームの趣旨を説明すると、俺は早る気持を抑え木兎の元に向かう。
「よぉ木兎、俺の妹知らねえかァ?」
「ゲゲッ!なんでバレてるんだよ」
やっぱりかよ。この糞ミミズク、油断も隙もねえな。
「ああ?手ぇ出したら殺すぞって俺オマエに言ったよな?」
奴の胸ぐらを引っ掴んで、乱暴に前後に揺らす。
「いや、で、でもちゃんと赤葦が音駒んとこまで送り届けるって言ったし!」
目を白黒させながら木兎は言い訳する様に喚いた。
赤葦…?なんであのセッターが?
木兎よりはマトモな奴だと思っていたが、体育館の端で柔軟を始める音駒メンバーの中に鈴の姿は無い。
「まだ戻ってきてねえみたいだが、お宅の赤葦クンは鈴と二人でどこへ消えたのかなァ?」
「いや、だってまさかあの赤葦が、そんなこと…」
まぁ俺だって思ってねえよ、女なんかに興味ありませーんって常時澄まし顔のあの赤葦が、まさかそんなこと…。