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跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第5章 魔すら魅了する其の名は――!


 マネージャーたる者、一部の部員だけと仲良くしていてはならぬということで、誰が誰にドリンクを配るかということは、完全に当番制で決まっております。無論、それはチーフマネージャーの水戸さんも例外ではございません。
 本日の水戸さんの担当は平部員達でございまして、魔王もそれについて行ったたのですが、魔王自ら手渡すドリンクはなかなかに好評でございました。
 彼らの中には昼休みのカフェテリアで恐る恐る跡部様と魔王の会食の様子を眺めていた者もいたのですが、マネージャー達が魔王と仲良くなったことで、その警戒も解けたのでございましょう。
 そして魔王の方も珍しく一歩引いた様子で部員達に接しようとしていたのでございますが――。
「あの、俺も魔王様って呼んでもいいですか?」
「うむ、構わぬぞ」
「ディオグラディアちゃんって呼ぶのは?」
「あ、田中! 抜け駆けいくない!」
「ふ、魔王たる余を『ちゃん』付けで呼ぶ者がいるとはな」
「あ、ダメっすか?」
「構わんぞ」
「やったぁ!」
「じゃあ俺も!」
「ディオグラディアちゃーん!」
 明るい部員達の雰囲気に、すぐに馴染んだようでございました。
「はいはい、そろそろ練習に戻りましょうね!」
 その様子を楽しげに眺めていた水戸さんですが、流石に随分時間も経ってしまいましたので、部員達をコートに追い返そうと声をおかけになります。
「あっ、鬼軍曹のお怒りだぞ!」
「水戸軍曹に敬礼!」
「呼ぶんなら提督でお願いしますー!」
 けらけらと笑いながら言い返す水戸さんに、きょとんと魔王が首を傾げました。
「む? てにすは陸上の武術であろう。ならば提督、という海軍の呼び名はおかしくはないか?」
「え、武術?」
 今度は水戸さんの方がきょとんとする番でございます。
「テニスは武術じゃないですよ、スポーツです」
「すぽーつ?」
 さらに魔王がきょとん。
「すぽーつ……?」
「え、知らなかったんですか?」
 さらにさらに水戸さんがきょとん。
「……まぁ、実際に見ればわかりますよ! 今日はそんなに仕事もないですし、部長が打ってるところ見てきたらいいと思いますよ!」
 訪れた何とも言えない沈黙を勢いで誤魔化すようにして、首を傾げる魔王を水戸さんは跡部様のコートへと連れて行ったのでした。













 ――ピピ……カシャリ。


「成程……」
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