第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】
「じゃあ本題ね。僕たちはニートだから、基本的に毎日が暇!それは逆に、いつでも彼女を守れるということ!つまり、これからは積極的に外出して、散歩がてら彼女の行動範囲であろうこの赤塚区周辺や自宅近辺をくまなく調査し、彼女が安心安全に日々を過ごせるように努めようってわけなんだ!」
トド松が自信ありげに言い切ると、全員が「おぉ〜っ!」と歓声を上げる。
「あ、でも注意点があるよ。僕らの目的はあくまでも警戒。決して彼女のプライベートにまで首を突っ込むわけじゃないことを忘れないでね。よって、街中で彼女を見掛けたとしても、安易なストーキング行為は厳禁!下手すればむしろ僕らが不審者として本物の警察に捕まっちゃうからね。あと、もし件の男に出くわした場合、いきなり警察にはつき出さずにまずは動きを封じて事情を聞くこと。もしかしたらやむにやまれぬ事情があるかもしれない。…というわけで、おそ松兄さん」
「ごほん。いいかお前ら。俺たちにとって、絵菜ちゃんは大事な友達…いや、守ってあげるべき存在なんだ。彼女ほど、俺たち6つ子と対等に、かつ、優しく接してくれた女性はいない…だからこそ、俺たちは団結して、彼女を守る!恩返しってわけじゃねぇけど、男ならこんくらいやって当然だろ。なぁみんな!」
長男が檄を飛ばす。その言葉で瞳に決意を宿した兄弟たちが、次々と立ち上がった。
「ふっ…愚問だな」
「女の子ならともかく、野郎相手に遅れは取らないよ。彼女のためならなおさらね」
「僕頑張っちゃうよーっ!マッスルマッスル!ハッスルハッスル!」
「…面倒だけど、絵菜の役に少しでも立つならやってもいい」
「みんな…」
「よぉーし!じゃさっそく明日から始めるぞ!」