第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】
【6つ子side】
時は遡ること2日前―。
夜、6つ子の部屋にて、再び¨松野ブラザーズ緊急招集特別会議¨が行われようとしていた。
「ではまず点呼を取る!1!」
「2!」
「いやもうそれいいから。で?なんなのおそ松兄さん。こんな時間にさ」
チョロ松が時計を見ると、時刻はすでに午後11時を回っていた。早ければもう寝ている時間なため、全員若干眠たそうな表情をしている。
「僕明日早いから、なるべく手短に済ませてほしいんだけど」
「…何、またあの猫耳のライブ?」
「違わないけど、猫耳って言わないでくれる一松!彼女はにゃーちゃん!」
「けっ…どうでもいい」
「あー、二人ともそこまで。おそ松兄さんの話を聞こうよ」
トド松がチョロ松と一松の間に割って入る。二人が大人しくなったのを見て、おそ松が口を開いた。
「あー、何から話せばいいかな。彼女…絵菜ちゃんについてなんだ」
「絵菜ちゃん?」
トド松以外の4人が顔を見合わせる。
「実は今日、絵菜ちゃんに不埒な真似を働こうとする不届き者が現れたんだ!」
「「「「えぇぇぇッ!?」」」」
4人が目を見開いて驚愕する中、ただ一人冷静なトド松が手を挙げる。
「…いや、おそ松兄さん。ちょっと違う」
「へ?」
「正しくは、絵菜ちゃんに対して何か良からぬことを企んでいそうな男が現れた、じゃない?」
「ああ、そっちの方がしっくりくるな!じゃ訂正、さっきのなし!」
「いや二人ともなんで結託してんの?っていうかトド松も知ってるわけ?」
不思議そうなチョロ松がトド松を見るも、
「うん…まぁね」
と、トド松は気まずそうに視線を逸らす。
「い、一体彼女に何があったんだ?」
「…つまり、その男を殺せばいいってことだな」
「コロース!」
「ああもうお前ら、まだ話は終わってねぇっつーの!あと物騒だから殺す宣言やめて!」
勝手にヒートアップする弟たちを宥め、おそ松は一瞬トド松の方をちらりと見やる。
それに対してトド松もおそ松の目を見て小さく頷き、おそ松は再び兄弟全員を見渡した。