第8章 芽生えた感情【トド松、おそ松】
彼女は顔を綻ばせる。
「うん…ありがとう、おそ松くん」
…¨友達¨…なはずなのに。
なぜか、彼女から目が離せない。
俺は無意識に、彼女の頬へと手を伸ばす。
そっと触れて、慈しむように撫でる。…なんだか、マシュマロみたいだな。
「…おそ松くん…?」
微かに動く、彼女の小さな唇。
俺はゆっくりと、彼女に顔を近付けていき…
あと数ミリで唇が触れ合うほどの距離で、我に返った。
「!!?ごッごめん!!」
慌てて彼女から離れると、
ガンッ!「ッてぇぇーっ!!?」
その勢いで脇腹をテーブルに強打し、あまりの痛みに悶絶する。…ちょ、マジで痛い。アバラ折れたァ…
「だ、大丈夫!?」
「あー、うん…ってかマジごめん、俺何やってんだろ…」
まともに目合わせらんねぇけど、彼女が戸惑ってるのが分かる。…はぁ、穴があったら入りたい。
いくら二人きりとはいえ、付き合ってもないのに…き、キスとかしようとするか普通!絵菜ちゃんは友達なんだっつーの!
「えーっと…あ!そうだ、カップ麺!すっかり忘れてた、もうとっくに3分経ってるよなぁ!食べよう食べよう!」
「あ…う、うん」
わざとらしく大声を出してこのなんともいえない気まずい状況を切り換える。やべぇ、なんか全身があちぃ…湯気が吹き出そうだわ。とりあえずこいつを食って一旦落ち着こう。
カパ
「………ぇ?」
ん、何これ…なんかすっげぇ麺がもっさりしてるんですけど…
「…あー…スープ吸っちゃってるね…」
………
ちょ…何この空気。さらに気まずくなったんですけどぉぉぉ!