第8章 芽生えた感情【トド松、おそ松】
暫しの沈黙。やがて、彼女がおずおずと話しかけてきた。
「あの…おそ松くん」
「ん、何?」
「……ううん、なんでもない」
また沈黙。絶対なんでもないわけないよな?
俺に話そうか話すまいか思案してる…ってとこか。あー、なんかもっと楽しい話題でも振ればよかったな。
…ほら、またそんな落ち込んだ顔しちゃってさ。元気になったと思ったらもうこれだよ。…俺、君には笑っていてほしいんだけどな。
なんだか…初めて、無職童貞という自分のステータスを恨んだ気がする。いや、無職は今関係ないか。
理由さえ分かれば、俺だって彼女の力になれる方法があるかもしれない。思い切って聞いてみるか?あまり気は進まないけど…
「なぁ、絵菜ちゃん」
「おそ松くん」
視線がぶつかり合う。おぉ、タイミングぴったり…。
「あ…先にどうぞ、おそ松くん」
…ここはやっぱ、俺から言うべきだよな。
「うん、じゃあ聞くけど…ここに来るまでに、何があったの?もちろん、話したくないなら無理にとは言わないけど…できれば、教えてほしい」
彼女はほんの少しだけ顔を伏せて、
「…うん。私も、黙ってるのはよくないと思ってたから…話すよ」
ぽつぽつと、ここに至るまでの経緯を俺に話してくれた。