第8章 芽生えた感情【トド松、おそ松】
ガララッ
「たっだいまーっ」
「「!」」
ちょ…雰囲気ぶち壊しなんですけど。タイミング悪すぎ…。
「お兄ちゃんが帰ったぞー…って、あり?トド松、それに絵菜ちゃん?!なーんだ、遊びに来てくれたのー?」
「おそ松くん…」
「おそ松兄さん、ちょい黙っててくれる?あと空気読んで」
「え?どしたの、なんかあった?」
本気で分からないって顔だ。さすがデリカシーという文字が辞書にない長男。いや、察してくれよ。明らかにいつもとテンション違うじゃん。
…でも…いざという時は頼りになるんだよなぁ。
仕方ない。
「…おそ松兄さん、ちょっと」
「は?」
ちょいちょい、と手招きをして、台所の隅に移動する。
「なんだよトド松」
「兄さん、もうこの後どこにも出掛けない?」
「?うん。家にいるけど?」
「そう。じゃあさ、しばらく絵菜ちゃんの傍にいてあげてくれないかな?彼女、訳あってまだ自宅に帰れないんだ」
そこまで聞いて、ようやく何かを察したのか、おそ松兄さんはニカッと笑う。
「おう!お兄ちゃんに任せろ!」
…正直、この変態に今の彼女を任せていいものか不安は尽きないけれど、一人にさせるよりはマシだ。せっかくの厚意も無下にはできない。
「うん、ありがと。…絵菜ちゃん」
名前を呼ぶと、彼女がこちらに寄ってくる。
「どうしたの?」
「ごめん、僕これからさっき一緒にいた子たちに会いに行ってくるよ。あ、心配しないで、君のことはうまく誤魔化すから。僕が帰ってくるまで、おそ松兄さんといてくれる?そんなに時間はかからないと思うけど、一人でいるよりはいいだろうし」
「…分かった。気を付けてね、トド松くん」
「うん。じゃあおそ松兄さん、彼女のこと頼んだよ。くれぐれも!変な行動起こさないように!」
「はいはい、了解了解」
念のため釘を刺してから、僕は居間を出ていく。
…兄に頼っちゃう辺り、僕もやっぱり弟だよなぁ…