第7章 動き出す、歯車
一斉に土下座をする僕たちに、とりあえず落ち着いてほしいと説得され、なんでこんなことになったのか理由を説明すると。
「なんだ、そんなことだったんだ。私、気にしてないよ?」
絵菜ちゃんはあっけらかんとそう言って、笑った。
「確かに予想通りの反応で泣きそうにはなったけど、それは辛いとか苦しいとかとはまた別だし。それにむしろみんなが気遣ってくれてるのがなんとなく伝わってきて、嬉しかったっていうか」
「で、でも絵菜ちゃん。僕たちそもそも、君をお祝いしたいって話だったのに、結局無理にここに押し掛ける形になっちゃったよね?しかもろくに手伝いもせずもてなされるだけもてなされて…普通逆だよね?」
うーん、と絵菜ちゃんは考える仕草をする。
「でも私、みんなが一緒にいてくれるだけで楽しいし、幸せだよ。それじゃだめかな?」
「え」
「友達って、そういうものじゃない?もちろんみんなの気持ちが嬉しくないわけじゃないの。でも、できればみんなとは対等な関係でいたい。私なんて偉くもなんともないんだから、気を遣うだけ損ってものだよ。甘えられてるとも思ってない。だからもう謝ったりしないで?どうせなら謝罪の言葉じゃなくて、¨ありがとう¨ってお礼を言い合う仲になりたいな」
…この子、凄いな。
価値観の差だろうけれど、僕には全て正論に聞こえる。
申し訳ない気持ちが消えたわけじゃない。でも、これ以上頭を下げるのは間違いなんだと、そう思わせる確かな説得力があった。
絵菜ちゃんと知り合ってから、僕たちはとにかく彼女に嫌われまいと必死だった。少しでも何かやらかしてしまったらとにかく謝る。クズなところを見せない。それの繰り返し。
でも彼女は違う。¨嫌われないように¨なんてネガティブな考えを持っていない。あくまで、¨仲良くなりたい¨の一択だ。
純粋すぎる。いや…僕たちがどうかしていたんだろう。
「絵菜ちゃん…」
「というわけで!この話はおしまい!お茶が冷めちゃうよ」
僕たちは顔を見合わせ、絵菜ちゃんの言葉に笑顔で頷く。…なんだか、吹っ切れた。