第7章 動き出す、歯車
一松が目を見開いて、十四松を見る。
「ど、どういう意味?十四松」
僕が聞くと、十四松は笑顔のまま答える。
「んとねー…ここに来てから僕たち、驚くばっかりで全然喜んでなかったよね?だから絵菜、もしかしたら傷付いてるんじゃないかって不安に思った一松兄さんが、手伝う振りをして様子を見に行ったんだ。違う?一松兄さん」
いや、顔も口調もいつもの十四松なのに、言ってることが誰おま状態なんだけど。こいつたまにこういうとこあるよな…。
一松は相変わらずのだんまりだけれど、否定はしない。つまり十四松の言う通りなんだろう。
でも…確かにそうか。
絵菜ちゃん、表向きは明るく振る舞ってたけど…本当は僕たちを招きたくなかったのかもしれない。断られた時に諦めるべきだったんだ。
「…あーあ、やっぱそっかぁ。弟に気付かされるなんて、お兄ちゃんもまだまだだなぁ〜」
おそ松兄さんはわざとらしく大声を出しながら、一松の髪をわしゃわしゃと撫でる。
「ちょ…なに」
「別にぃ〜?心優しい弟を持ってお兄ちゃん、幸せだなぁ〜と思って」
「…うざ。どうせ分かってたくせに」
にしし、と無邪気に笑うおそ松兄さんと、毒づきながらもまんざらでもなさそうな一松の様子を見て、張り詰めていた場の空気が和む。…おそ松兄さんもいい性格してるよ、ほんと。
「…そういえば、今彼女はお茶を用意してくれているんだよな?」
「うん、そのはずだけど」
「この前も淹れてもらったというのに、俺たちは毎度彼女に甘えすぎじゃないのか?」
カラ松のセリフに、みんながしん…と静まり返る。
と、そこで扉が開き、人数分の湯呑みを載せた盆を持った絵菜ちゃんが入ってきた。
「みんな、お待たせ!…ってあれ?なんだか暗いけど、どうしたの?」
「…絵菜ちゃん」
ザザザザザッ
「「「「「「すみませんでした!!」」」」」」
「え…えぇっ!?」