第7章 動き出す、歯車
「あっ、そういえばカラ松兄さん。母さんからお土産もらってきてたよね」
「ああ、忘れるところだった」
カラ松はソファの横に置いてあった紙袋を掴み、中からさらに小さな紙箱を取り出した。
「それは?」
「うちの母さんが、みんなで食べてくれと言って持たせてくれたものなんだが…もしかして今川焼か?」
「うん、この箱ってそうだよな。ってことは7個入ってる?」
おそ松兄さんを筆頭に、みんなで箱を取り囲む。カラ松が蓋を開けると…
「「「「「「!!?」」」」」」
ピシャァァァアッ!
「あれ?5個しかないね」
ちょっと待てぇぇぇぇ!!
なんで!?なんでよりにもよって5個!?え、母さん知ってるよね、僕たち6つ子+絵菜ちゃんって分かっててわざとなの?わざとなのかこれ!なんでそこ妥協したのさ!
1個はもちろん絵菜ちゃんの分だけど、残り4個どうすんだよ!天敵の数字!悪魔のナンバー!前にもおんなじことあったよね!?あの時物申したはずなのに、絶対わざととしか思えないよ!!
「…お、おい…これどうするよ」
「戦争開始か?」
「いやいやいや、さすがに人んちで乱闘はできないって。ってか母さんマジなんなの…」
「もう1個絵菜にあげて半分こにするのは?」
「「「それだ!」」」
「でもクリーム混ざってたらどうするー?」
「「「「!!」」」」
「どっちにしろ戦争じゃんかー!」
ぎゃいぎゃい…
「……ふふっ」
僕たちが今にも取っ組み合いになりそうな勢いで騒いでいると、絵菜ちゃんが口元に手を当てて吹き出した。
「えーと…絵菜ちゃん?」
「ふふ、あはは…っ…もう、みんなったら…あははは」
心の底から面白そうに笑う絵菜ちゃんに、僕たちは争うのをやめて釘付けになる。
…笑われているはずなのに、全然不快に思わなくて。
むしろ、彼女の笑顔が、とても綺麗に見えた。