第7章 動き出す、歯車
【チョロ松side】
「たっだいまー」
僕たちが絵菜ちゃんの部屋で大人しく待っていると、いつの間にか消えていた一松を連れて、おそ松兄さんが戻ってきた。
「ああ、おかえり。一松、どこ行ってたの?トイレ?」
「え…いや、その…」
なんだか歯切れが悪いな…元からハッキリ喋るタイプでもないけどさ。
するとおそ松兄さんは一松の肩をぽんぽんと叩き、ぶぅと唇を尖らせる。
「いやさー、こいつ絵菜ちゃんのとこにいたんだよねー。ずるくない?びっくりしたよ俺」
「え!一松兄さん、まさかの抜け駆け!?」
トド松が驚きの声を上げる。その反応に心底うざそうにしながら、一松は床に腰を下ろした。
「…なんとでも言えば。ゴミは話さないから」
そう言って体育座りをし、完全に僕たちと距離を取ってしまう。
…ああ、黙っちゃった。一松って今の性格になってからはいつもこうなんだよね。
本心を抑え込んじゃうっていうか。口で説明するのを最初から諦めてるっていうか。
こんなことは日常茶飯事とはいえ、やっぱり見ていられなくて、僕は一松に声をかけようとした。
けれどその前に、十四松が動いた。
「一松兄さん、絵菜のことが心配だったんだよね?」
「…!」