第7章 動き出す、歯車
私のセリフを聞いた瞬間、みんながとんでもない形相で飛び上がる。し、心臓止まるかと思った…
「ど、どうしたのみんな?開けるよ」
「いや!いやいやいやいや、絵菜ちゃん!?お願いだから早まらないで!!」
「だめったらだめー!」
「…はぃ?」
ドアノブにかけた手を引き剥がそうと、トド松くんと十四松くんが腕に飛び付いてくる。
そしてそんな私たちを囲うように、他の4人がザザザッと音を立てて移動する。…気のせいかな、みんな冷や汗がすごくないかい?
「絵菜ちゃん、いくら俺でもさすがにこれは止めるよ!?自分の部屋なんだろ?!」
「え、う、うん」
「なぜそんなに冷静なんだ…いくら友人といえど、初回から女の子の自室はハードルが高すぎる…!」
「へ?」
「え、嘘、あんたって天然なの?やばいよ、やばい、やばすぎる…」
「そ、そんなことないと思うけど?」
「絵菜ちゃん、僕たちに気なんか遣わなくていいから!なんなら廊下に放置プレイでも、台所の床でもいいよ!というかもうちょっと自分がしようとしていることに疑問を持ってくれない?!」
あまりにもみんなが必死なので、ようやく私は理解した。これは誤解されちゃってるのかな?
「あはは、みんなったら焦りすぎ。私は平気だよ?というわけで、開けまーす」
「「「「「「うわぁぁぁッ!!?」」」」」」
問答無用で扉を開く。みんなは顔を手で覆って見ないようにしていたけれど、やがて…
「……あ、あれ?」
「ほら、ぜんぜんへーき。何もないでしょ?」
あれだけ騒がしかったみんなが、一斉に静まり返る。
そう、私の部屋にはほとんど何もない。
タンスやテレビ、CDコンポのようなものは一切なく、あるのは自宅から持ってきた小さなテーブルとソファとノートパソコンだけ。衣類は隣の物置部屋、布団は押し入れに入っている。
女の子らしい小物なんてないし、一番綺麗といってもところどころ壁や電灯に痛みがあり、カーペットやカーテンも入居する前からのものでなんとも地味。
だからいくら男の人といっても、見られて困るようなものは皆無なのだ。
「ね?だから気にせず入って。じゃあ私、お茶淹れてくるねー」
未だぽかんとしているみんなを残し、私は台所に向かった。