第4章 帰り道
【絵菜side】
東京郊外の中でもさらにはずれにある、築数十年のオンボロアパート。
外壁には蔦が生い茂っており、ところどころひび割れ、鉄筋は錆び、知らない人が見れば幽霊屋敷のようなそこに、私は住んでいる。
階段を上り、二階に上がって一番奥が、私の家。
「ただいま〜」
鍵を開けて玄関に入ると、部屋の向こうから何かが走ってくる足音が聞こえ、
「にゃーっ」
凄まじいスピードで、私の胸元に飛び込んできた。
「わぁっ!ただいまルル、遅くなってごめんね」
「にゃう〜」
ごろごろと喉を鳴らしながら私に擦り寄ってくる子猫を抱きしめ、優しく頭を撫でる。
実家から連れてきた愛猫のルルは、一人暮らしをしている私にとって唯一の癒しだ。
このアパートには私含め4人しか住んでいない。大家さんによると、ワケありすぎるのとこの外観のせいで、いくら格安にしてもさっぱり人が寄ってこないのだとか。
まともなお金がないまま上京してきた私にとっては、まさに天からの授かり物の如く迷いなしに飛び付いたのだけど…
2DKの狭い室内は、ところどころ壁紙が剥がれかけ、柱はボロボロ、襖は立て付けが悪くガタガタ、水回りはやっぱり錆びだらけというひどい有り様。
お風呂はないから銭湯通い、洗濯機もないからコインランドリー、料理…はかろうじてできるけど、コンロがぶっ壊れているため携帯用コンロを使うしかない。
最初は戸惑ったけれど、住み始めてから約一週間、ようやく慣れてきた気がする。ほら、住めば都って言うしね!