第16章 踏み出す勇気【チョロ松】
だいぶ離れてから、チョロ松くんはようやく口を開く。
「…絵菜ちゃん。短時間とはいえ、君を一人にした僕にも責任があるけど、これだけは忠告させて」
「う、うん…」
チョロ松くん、怒ってる…
「今後あんなのに協力しようとしたらだめだよ。どんな風に言い訳されたか知らないけど、普通アンケートに個人情報なんて書かせたりしない。もちろん街頭アンケートそのものが悪いわけじゃないし、本当にただ答えるだけのものもある。でも特に都会にはアンケートで詐欺を働く輩も多いからね。下手に個人情報を漏らすと後でお金を請求されたり、中にはもっと酷い悪用をされたりすることもあるんだ」
「…うん…」
「君はもっと人を疑うべきだよ。信じることは大切だし、心優しくて人当たりがいいのは君の長所でもあるけど、だからこそ悪い人間に騙されやすいんだ。これからは慎重にならないと」
…チョロ松くんの言う通りだ。私は他人に流されやすいし騙されやすい。自分の過去がそれをよく証明している。直そうと努力もしたはずなのに、結局、まだまだ私は世間知らずで…
強くならなきゃな、私…。
「……ごめんなさい、チョロ松くん」
「…あ!い、いや、僕こそごめん!なんだか説教みたくなっちゃったし、きつく言い過ぎたよ。…僕、さっきの男に腹が立ってて、イライラしてて…ごめんね、絵菜ちゃん」
「…!」
チョロ松くん…私にじゃなく、さっきの人に怒ってたの?
「と、とにかく、君が無事でよかった…」
「…ありがとう、チョロ松くん。助けてくれて」
「え?」
彼は、私を正してくれる。そう思うのは、甘えなのかもしれない。でも…
「…どう、いたしまして」
照れたようにはにかむチョロ松くん。そんな彼にこれ以上心配をかけたくない。その気持ちは本物だ。
自分の意思を強く持とう。…私、チョロ松くんに大事なことを気付かされてばかりだな。