第16章 踏み出す勇気【チョロ松】
今話題になっているというアクション映画が、ちょうどお昼頃からの上映だったので、私たちはそれに決めてさっそく観に行った。
平日だというのに、館内は超満員。公開されてからまだ一週間も経っていなかったとはいえ、その人気ぶりに違わぬ面白さだった。
約二時間の観賞を終え、映画館を出る。
「面白かったね!迫力のあるアクションものは、映画館で観るのが一番だよ」
「僕も久しぶりの映画だったけど、なんか新境地が拓けた気がするよ」
「みんなと来たりしないの?」
「映画は滅多にないかな。好きなジャンルも違うから、喧嘩になっちゃうしね」
そっか。みんなって容姿こそそっくりだけど、性格や趣味は異なるもんね。映画を観るだけでも喧嘩になるだなんて、想像しただけで微笑ましい…じゃなくて、大変そうだな。
「ちなみに、チョロ松くんってどんなジャンルが好きなの?」
「僕?僕はもっぱらアニ…」
言いかけて、チョロ松くんはバッと口を手で押さえる。
「ど、どうしたの?」
「…あ、あー…そうだね、ど、ドキュメンタリーとかかな?」
「なるほど、そうなんだ」
アニ…とかなんとか聞こえた気がしたけど…まぁいいか。
「そ、それより、お昼ご飯まだだったよね。今から食べに行こうか」
時刻は午後2時過ぎ。確かにお腹減ったかも。
「賛成!どこにしよう?」
「大丈夫、周辺にある店ならリサーチ済みだよ」
「さ、さすが」
これは寝不足にもなるよ、うん。