第15章 気まぐれな猫は、恋を知る【一松】
入り口付近に突っ立ったままの私に、後ろから不満そうな声が上がる。私は慌てて奥にあるソファ席に腰掛けた。一松くんも続いて隣に座る。
そ、それにしても可愛い〜…!あっちにもこっちにも猫、猫、猫!猫カフェだから当たり前だけど、やっぱりこの空間にいるだけで癒されるなぁ…!
「…顔、にやけてるよ」
「ふへ!?」
一松くんに指摘され、思わず両手で頬を押さえる。も、もしかして私、すっごくだらしない顔しちゃってたのかな?
「…嘘。笑ってた」
「に、にやついてるのと変わらないよね?!」
「そう?いいんじゃない別に、幸せそうだったし」
「!…も、もう」
からかわれた気がするけど、彼がいつもより饒舌なのがなんだか嬉しくて、またしても頬が緩んでしまう。
「っ…いつまで笑ってんの…ほらメニュー。なんか頼む?」
ずいっとメニューを差し出される。態度は相変わらずぶっきらぼうだなぁ…と苦笑しつつ、私はメニューを開いた。
けっこう本格的な料理とかもあるんだ。でもお昼は自宅で食べてきたし、飲み物だけでいいかな。
「一松くんはどれにする?」
「…メロンソーダ」
「それだけでいいの?」
「昼飯食ってきたし…あんたは?」
「私も食べてきたんだ。だからコーヒーでいいかなって。あ、ウィンナーコーヒーもあるんだ。こっちにしようっと」
「!ウィ…」
「ん?どうしたの?」
「…い、いや、なんでもない…」