第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】
前方に人だかりが…あの中央にあるの、ワゴン車か?
「クレープだジョー!おいしいクレープだジョー!」
そしてなんかどっかで聞いたことのある声…
近付いてみる。ワゴン車の側に立て掛けてある看板には、「クレープ屋」の文字。
そして車の中にはミスターフラッグが。
「…え、ハタ坊、何やってんの?」
「クレープだジョー」
「は?」
「おいしいクレープだジョー!」
…いやこの流れ前にもあったな。本業どうしたよ。
「何…タダなの?」
「ここに料金が書いてあるジョー」
ハタ坊からメニュー表を渡される。あ、ちゃんと金取るのか、なら安心…ってか無駄に種類多いな…。
まぁいいや、小腹も空いたし買ってみるか。
「決まったジョ?」
「ちょっと待って、まだ…」
「今なら友達限定クレープもあるジョー?」
「なにそのスペシャルな響き。じゃあそれで…」
「一松くーんっ!」
え?まさか…
声のした方を振り返ると、手を振りながらこっちに走ってくる絵菜の姿が目に入った。思わずメニュー表を落としそうになる。
…なんで来た…!
「こんなところにいたんだ。探したよー」
「な、なんで…十四松は?」
「さっきの場所だよ。一松くんのことが気になったから、追いかけてきたの」
…は、はぁぁっ!?
意味が分からない。気になったから?俺そんなに態度表に出てたのか?!
大体十四松も十四松だ、何簡単にこいつ一人で行かせてるんだよ、その間に何かあったらどうするんだ、俺たちの苦労が水の泡じゃねぇか!いや苦労ってほどの働きもしてないけども!
「…あ、あの、一松くん?迷惑だったかな…?」
おまけにこいつは無自覚なのか上目遣いで俺を見上げてきやがる。だぁぁぁあッなんの苛めだこれぇぇぇッ!
「ジョ?その子、君のお友達だジョ?」
「…え?あ、ああ、まぁ…」
「そうなんだジョー!じゃあ君も友達だジョー!限定クレープ食べるジョー?」
「限定クレープ?わぁ、食べたいです!いくらですか?」
「ちょ、おま」
「お姉さん可愛いから特別に1万円から500円にしてあげるジョー!」
ど、どこからツッコめば…!?