第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】
他にも絵菜が興味ありそうな場所をたくさん案内して、疲れた僕たちは近くの河原で一休みすることにした。
僕と彼女は、草原に腰を下ろす。もう少しで夕方かな?空が赤く染まり始めてる。
「爽やかで、気持ちのいいところだね」
「でしょー?僕ここによく素振りしに来るんだ!」
「ふふ、十四松くん野球好きだもんね。野球選手になろうと思ったことはないの?」
「あはは、ないない!野球好きだけど、僕下手だからね!」
「そっかぁ」
可愛いなぁ、絵菜。僕の話を嬉しそうに聞いてくれるし、ずっとニコニコしてくれてるから僕もあったかい気持ちになっちゃう。
元気がなかったら励まそうと思ってたんだけど、逆に癒されたかもー。
「………」
あれ?一松兄さんがなんか怖い顔でこっちを見てる。座らないのかな?
「…俺、飲み物買ってくる」
「え、一松くん?」
「一松兄さん?」
呼び掛けても返事すらしてくれずに、一松兄さんはどこかへ歩いていってしまった。飲み物ってことは、自販機かな?この辺りで一番近いのはどこだったっけ…公園かも。
「……」
絵菜が僕を見る。何か言いたげだ。
「十四松くん…私も一松くんについていってもいいかな?」