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【おそ松さん】本気の恋と、6つ子と、私。

第9章 僕らの知らない君【十四松、一松】





あっさり見つかっちゃった。逃げると怪しまれるからって、一松兄さんに連れられて僕は彼女の元へと向かった。


「こんにちは〜絵菜!久しぶりだねー!」


「うん、久しぶり十四松くん。一松くんも」


「…ああ」


今のところ、いつもの彼女だ。とりあえず安心ー。


「二人は、どこかに行く途中?それとも散歩?」


「散歩だよー!ね、一松兄さん!」


「…ああ」


「そうなんだ。ね、もしよかったらこの後街を案内してもらえないかな?私、近所とかハローワークの近辺なら分かるんだけど、まだ知らない場所たくさんあるんだよね。この街とは長い付き合いになりそうだし、教えてもらえたら嬉しいなってずっと考えてたの。あ、もちろん二人が良ければ、なんだけど…」


そっか、彼女引っ越してきてまだ1ヶ月も経ってないんだっけ。じゃあ行動範囲狭いよね?あれー、散歩の意味ないじゃんー。


絵菜に街案内してあげたい気持ちもあるけど、それじゃ行動範囲が広がってますます狙われやすくなりそうだし…でも彼女に喜んでもらいたいしなぁ。


一松兄さんはどうするかな?


「……いいよ」


わ、意外!あの一松兄さんが!


「本当?ありがとう!ちょっと待ってて、今お会計済ませてくるね」


彼女が席を立って、お店の中に入ってく。姿が見えなくなってから、僕は一松兄さんに尋ねた。


「ねぇねぇ、一松兄さん。ほんとにいいの?」


「一緒にいてあげたほうがいいって言ったのはお前だろ」


「んー、そうだけど」


「…それに、もしかしたら釣れるかもしれないしな」


「釣れる?」


意味がよく分からなくて首を傾げていると、店の扉が開いて絵菜が出てきた。


「お待たせ、二人とも!さっそく案内、よろしくお願いしますっ」


キラキラな笑顔だ。そんなに楽しみなのかな?よーし、それなら僕も一肌脱いじゃおう!


「任せて!絵菜、まずはこっちだよーっ」


僕は彼女と手を繋いで歩き始める。繋いだ瞬間、「えっ」と絵菜の小さな声が聞こえた。


「一松兄さんも、絵菜と手繋ごうよー」


一歩遅れてついてくる一松兄さんを振り返る。でも兄さんはなんだか少し頬を赤く染めていて、こっちを見てくれない。


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