第1章 プロローグ
「…あれ?アリアちゃん来てないね」
「…だな」
俺は適当に返しておいた。どうせ、向こうはニヤニヤ笑って俺を見ているんだろうから、相手にしない方がいいんだ。
リンゴーン…リンゴーン…
朝のチャイムが鳴り響く。俺は静かに席へ着いた。
他の面々も急いで座った。チャイムが鳴ってもまだ立っている奴は、センセイから罰が厳しい下されるので、皆それを恐れているのだ。
シーンと静まり返った教室は、何処かピリピリとした緊張感を放っている。この様な状態であれば、センセイも文句は言わないだろう。
…色々と神経質で細かいうちの担任を待つこと5分。
さっきまでの状態が嘘の様に、集中力の失われたクラスはワイワイガヤガヤ騒ぎ始めた。
怒られても知らないぞ……。
頬杖を付いて、隣の空席を盗み見た。
いつもある元気な姿は、チャイムが鳴っても現れない。
「アリア…」
小さな声で、彼女の名前を呼んだ。
返事なんて、あるはずないのに。