第1章 悲劇の始まり
(ここは...)
人の気配はなく、空はどんよりとしていて、ビルの明かりは点々としていた。ガラスは所々割られていて、破片が地面に散らばっている。
(どうして...?)
ここのところ、特に大きな事件は無かった。デモは死者が出るようなものはないし、テロなんてものも起こす人はいなかった。なのにこの状況は異常すぎる。
(あ、あれは...人!?)
必死の形相をした男性がこちらに向かって走ってくる。体は傷だらけで火傷のような跡があって、服はボロボロ、息を切らせている。私には気付く様子もなく、何かから“逃げて”いるような気がした。
ふと、その男性が後ろを振り向くと、黒く大きな“何か”が見えた。するとその“何か”は、口のようなものを大きく開けたと思うと、男性を消して、いや、“飲み込んで”しまった。
(嘘...)
恐怖のあまり、足が動けなくなってしまった。このままだと自分も食べられてしまう、そう思った次の瞬間、