第3章 私ができること
「どうしたらいいの...」
怪物は未だ女性を握りしめたまま、街灯やビルなどを壊していく。
「あれ?どうして...」
怪物の歩いた跡には食べられた人間の残骸が残されている。吐きそうになって口元を抑えた。しかしなぜ、あの女性は握りしめられたままなのだろうか。もしかしたら、何か理由があるのかもしれない。
「でも、そんなの分かんないよ...」
そうこうしているうちに、怪物はこちらに気付いてしまった。片腕を左右に振りながら歩いているので、多分眼は見えていないのだろう。しかし、気配に気付かれてしまったようで、こちらへと向かってくる。けれど、その足取りはゆっくりとしていた。きっと重みで速くは進めないのだろう。幸い、私は脚が速いので油断さえしなければどこかへ逃げられそうだ。
「とりあえず隠れないと。」
女性は食べられる気配がしないので、とりあえず助ける方法を考えることにした。
怪物の腕は重そうだ。街灯は簡単に折れ曲がるし、さっき振り下ろした時も地面に大きな跡ができていた。
「私だけの力じゃ無理かもしれない...」
でも他に人はいない。いるのは残った部分だけ。いや、"いる"とは到底言えない状態だ。
私はふと立ち止まった。そこは最初にいた場所。怪物が現れた時にいた場所。
「酷いことになっちゃったなぁ...」