第2章 『Trade 9→2 』菅原
いつものように外で食事したあと、今は一人で暮らすのアパートまで彼女を送り届ける。
それは、ここ半年の間で俺達のお決まりになっていた。
でも、部屋の中に入ったことはない。
から声をかけられたことはなかったし、俺もきちんと付き合うまではそうするつもりはなかった。
だって、好きな相手が一人で暮らしている部屋になんて入ってしまったら。
自分を抑えきれるかどうか自信がなかった。
だから、いつもと同じように部屋の前までを送って、おやすみと声をかけ、背中を向けた。
いつもなら、それでさよなら。
だけど、今日は違った。
「あ……あの。」
の声に、振り返る。
するとそこには、意を決したように真剣な表情のがいた。
「お茶でも飲んで、いきませんか。」
「え……」
予想外の言葉に、俺は少し戸惑ってしまった。
とうとう、部屋に入れてもいいと思ってもらえるまでになったんだ。
そう思ったし、もちろん嬉しいんだけど……
は、どういうつもりで俺に声をかけたんだろう。
何と言葉を返そうか迷っていたら、が、そっと俺の服の袖をつまんだ。
「まだ一緒に………いたいです。」
その言葉に、心臓が揺さぶられた。
夢でも見てるのか、俺……
呆然としたままに促され、その日、俺は初めて彼女の部屋に入ることになった。