第1章 『Trade 2→9 』影山
菅原さんが卒業してからの2年間、俺達は変わらずチームメイトとして過ごした。
けど、一旦自分の中に芽生えた感情は簡単には消え去ってくれない。
卒業するまでずっと、あいつを目で追う日々は続いた。
もう叶うことのない気持ちを抱えながらあいつの側にいることは、俺にとって、とても辛いことだった。
菅原さんと付き合うようになってから、あいつは目に見えて綺麗になった。
女って、好きなやつができるとこうも変わるのか。
そう思った。
見た目に気を遣うようになったとか、そんな単純なことだけじゃない。
内側から滲み出る眩しさがあった。
その眩しさに当てられると、その度に、こいつは本当に菅原さんが好きなんだと思い知らされ、俺は勝手に傷ついた。
あいつをあんな風に変えたのが自分じゃないことにどうしようもない腹立ちを抱えると、いつもハッとした。
俺はあいつを忘れられる日は来るんだろうか、と。
あんなに好きで、どうしようもなく欲しいと思った女は初めてだった。
卒業してからも、今に至るまでそんな女には出会えていないのが現状だ。
それもある意味、当たり前なのかもしれない。
そんなに簡単に出会えるわけない。
自分の全てを傾けたくなるくらい、好きになれる女なんて。
そのくらい、あいつは……は、俺にとって特別な女だった。