第1章 『Trade 2→9 』影山
卒業と同時に東京で一人暮らしを始めた。
実業団に所属する傍ら、全日本の選手としても活動する俺の毎日は多忙だった。
けど、やりたいことをやってメシが食えているわけだし、そういう意味ではそこらへんのやつらよりよっぽど良い人生を送っていると思う。
というか、充実している、というのだ。
多分、これは。
そんな折、舞い込んできたのは高校の同窓会の報せだった。
そのハガキを、最初はすぐに破って捨ててしまうつもりでいた。
実際、指に力を入れるところまではしたのだ。
でも、ハガキが破けるまでには至らなかった。
その数秒の間に思ってしまったからだ。
に、会えるかもしれない。
連絡先は残したままだったけど、卒業以来、特に連絡を取ることもなく今まで来ていた。
連絡をしたところで、あいつが菅原さんのものだという事実は変わらないし、会っても辛いだけだ。
そう思っていたからだ。
なのに、卒業してから5年を数える今になって同窓会の報せを見た瞬間、何故か俺は今までと違ってどうしてもの顔が見たくなった。
今になって思えば、それは予感だったのかもしれない。