• テキストサイズ

【HQ】春が始まる。〜After Story 〜

第2章 『Trade 9→2 』菅原




俺の言葉で、いくらか正気を取り戻したようなは、とろんとしていた目元を少しハッキリさせた。



「あの、私………別れたばかりなので。そんなすぐには気持ちの切り替えができないっていうか…」



「あいつとは長かったもんな。俺はそこまで長く付き合った子は居ないから想像でしかないけど、何となく分かるよ。」



「…………。」



「すぐにとは言わない。が、もう一度ちゃんと笑えるようになる日まで待つよ。だから、それまで側にいさせてくれないかな。」



「すがわら、せんぱい……」



の目に、みるみる涙の膜が張る。



「先輩は、なんでそんなに優しいんですか………」



そう、絞りだすように呟いたあとは、こらえきれずにその瞳から涙が溢れだす。



別に俺、優しくなんかないよ。
ただ、が欲しいだけなんだ。
自分の欲に正直なだけなんだよ。



昔も今も、そういう意味で俺は全然変わっていない。



泣き出してしまったの、肩を抱くくらいなら許されるだろうか。



そう思い、その肩に手を置いたけど、いざそうしてしまったら我慢できなかった。



そのまま引き寄せて、自分の腕の中に収める。



「よしよし。辛かったよな………」



髪を撫でて、できるだけ穏やかな声を出して、を落ち着かせるように努める。



傷心のに付け入るみたいになっているのは何だか心苦しいけど、そんなことは言ってられなかった。





だって、俺の好きな子が泣いている。



一番笑っていてほしい彼女が、あいつを思って泣いている。



俺は影山の代わりにはならないかもしれないけど。



俺は俺なりの方法で、の心に寄り添ってみせる。



絶対、忘れさせてやるから。



そう決意を新たにし、俺は声を出して泣くの背中をさすり続けた。

/ 37ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp