第2章 『Trade 9→2 』菅原
の希望を聞いてから、俺が店を選んだ。
カップルに人気の、個室居酒屋。
確かあそこは、二人で並んで座ると肩が触れ合うほどの距離感のカップルシートがあったはず。
前に同僚との飲み会で大人数用の個室を使った時に見て、なんだこの個室!と驚いたことを覚えていた。
会えていなかった時間なんて、すぐに埋めてやる。
真隣に座って、昔みたいにちょこちょこお前の世話を焼いて、その顔を見つめるから。
思い出してほしい。
あの頃、いつも俺がいたことを。
俺がどれだけのことを好きだったかを。
居酒屋に着いて、例の個室に入ったは、その狭さに驚いていた。
「なんか、かまくらみたいですねー。」
と、呑気に言うが可愛くて、俺はつい笑ってしまう。
食事を始めてから、気付いたこと。
はお酒が弱かった。
もそれを自覚しているのか、一杯目に頼んだサワーを傍目には減ったのかどうかも分からないくらいの速度で、ちびちびと飲んでいた。
にも関わらず、だんだんとその頬は赤く染まって、瞳はとろんとしてきている。
あ、やばいな、これ。
そんなの様子を見たら、自分の中の邪なものが疼きだすような感覚がしてくる。
今日の今日でそれはまずい!!
そんなことしたら、次がなくなるかもしれない。
そう考えて何とか自分を収める方向へ持っていく。