第2章 『Trade 9→2 』菅原
が俺の横を通り過ぎる瞬間、俺は思わずの腕を掴んでしまっていた。
突然のことに驚いた様子のは、すぐに顔を上げて俺の方に視線を向けてくる。
「………菅原、先輩…?」
「久しぶりだな。元気にしてた?」
「は、はい!先輩は…」
「うん、俺は元気だよ。……ごめんな、お前の顔見たら思わず声より先に手が出ちゃって。びっくりしたよな。」
そう言ってから、の腕を掴んでいた手を離す。
「あ、いえ。久しぶりにお話出来て嬉しいです。」
そう言って、は笑う。
多分この子は、俺がまだ、ふとしたときにを思い出して切なくなる夜があることなんて
想像もしていないだろう。
「今、こっちで働いてるの?」
「はい、そうです。」
「東京に行ったもんだと思ってたよ。その方が影山と長く一緒にいられるだろうし…」