第2章 『Trade 9→2 』菅原
部のやつらも、みんなのことが好きだった。
俺と同じポジションを争っていた、2つ下の後輩である影山もその一人だ。
影山は中学からバレーの名門校でバリバリやっていたようなやつだから、俺みたいな並のプレーヤーが技術面で勝てるはずもなく、影山の入部後、早々に正セッターの座は明け渡すことになった。
だからこそ、好きな子だけは、あいつに渡すわけにはいかない。
そう思っていたけれど、影山が高校生ながら全日本の代表合宿に招集されたことをきっかけにして、二人は付き合いだしてしまった。
物理的な距離じゃ、ないんだなあ。
その時、俺は思った。
俺なら影山よりずっと近くで、ずっと側でを守って大切にすることができるのに。
それでもは影山のことを選んだ。
と最後に話した教室での、去り際。
に言った言葉を俺はまだ鮮明に覚えている。
「幸せになれよ。」
本当は自分が幸せにしてやりたかった。
でも、が隣にいることを望んでいるのは俺じゃなくて影山だから。
悔しいけど、それが現実なら。
自分が、大好きで大切だった子の幸せくらい、本気で願ってやりたかった。
今も、は幸せなんだろうか。
影山とは、うまくやっているんだろうか。