第2章 『Trade 9→2 』菅原
仕事仲間との飲み会からの帰り道。
大勢の人が行き交う雑踏の中に、俺はまるでそこだけ光が当たったかのように一人の女の子を見つけた。
嘘だろ。
何度も瞬きをするけど、その姿は消えない。
むしろ、こっちに向かって近づいてくる。
俺に気付いている訳じゃ無さそうだから、単に進行方向がこちらなだけなのだろう。
高校時代、俺のどうしようもなく愛しくて大切だった女の子。
もう女の子なんて言うのは逆に失礼かもしれないくらい、彼女は当時より大人っぽくなっていた。
彼女、は俺の所属していたバレー部のマネージャーだった。
しっかりしているようで、どこか抜けているは、男なら大抵持っている庇護欲みたいなものを存分にかきたてる子だった。
やっぱり、一人で何でも簡単にやってのけるような子より、この子は俺が居ないとダメだなって、そう思わせる子に男は弱いと思う。
そういう意味では満点と言っていい性格と不器用さを兼ね備えていた。
実際、何かをやらかすことはとても多かった。
でもそういうとき、持ち前の素直さを発揮してすぐに謝り、差し伸べられる手を受け入れるから、男はみんな彼女を助けたくなる。