第1章 恋人
新年、実家で家族とのんびり炬燵で過ごす時間。
あたしは父親と一緒に熱燗を開けていた。
「あんたねぇ、もうちょっと女の子らしく出来ないの?」
くっちゃくっちゃと鮭トバを噛みちぎるあたしに、母さんは子供相手のように躾する。
「あら、おせちもつまみもあたしが作ったぐらい、料理の腕はありますことよ?」
髪をふぁさっとたなびかせ、手は箸を持ってお手製の煮物に手を伸ばす。
「でもこんなんじゃ、犬飼選手・・・じゃないわね、冥君に嫌気さされちゃうわよ?」
「あーポン酒が美味いなぁ!」
あたしは母さんの言葉をかき消すように熱燗を煽った。