第10章 離れてしまった仲間たち
~ルビーside~
幼い頃の夢を見た。まだ父さんは今のように仕事に追われておらず、サファイアも父さんのフィールドワークを手伝っていなかった頃。そして、僕も今のサファイアと同じように、ポケモントレーナーに憧れていた頃。
「サファイア、ルビー。お客さんよ。挨拶しなさい」
ある日、お父さんの友達だという男の人が、女の人を連れて遊びに来た。
「久しぶりね。2人とも大きくなって」
僕らの頭を優しく撫でる女の人。とても綺麗な人だと思った。この人と母さんが友人だなんて信じられない。そのくらい、彼女の美しさは異彩を放っていた。後に、彼女はジョウト地方で、かなり有名な女優さんだったということを知る。父さんと男の人は話があるとかで、僕らは外に連れ出された。彼女は僕らの手を引きながら言った。自分にも僕らと同じ歳頃の娘がいるのだと。
「私、その子に会いたい! どこにいるの?」
サファイアが聞くと、女の人は笑った。
「ここに着いた途端、ポケモンと一緒に飛び出しちゃったの」
ここのポケモンが珍しいみたい。呆れたように笑った。
「そんなところ、お父さんそっくりね」
僕のお母さんはそう言って、僕の頭を撫でた。
「何かあったら守ってあげなきゃね! ルビーは男の子なんだから」
僕は誇らしく頷いたが、サファイアはそんな僕を見て笑った。
「ルビーは無理だよ!だって、走るのだって私の方が早いし、木登りだって遅いし!」
「そんなことない!! あれはサファイアがズルしたからだよ!!」
いつものように喧嘩しそうになる僕ら。それを止めたのは、遠くから走ってきた泥まみれの子。その子は女の人に勢いよく抱きついた。
「母さん!!」
「あらあら。こんなに泥だらけになっちゃって。お風呂お借りしなくちゃね!」
女の人は綺麗な服が汚れるのも構わず、その子を抱きしめた。2人の周りをクルクルと楽しそうに回る2匹のポケモン。
「見て!新しい友達! このピンク色の子がころで、こっちはえな! この子たち、小さいのに強くて、びっくりしちゃった!! 」
その泥まみれの子は、キラキラと目を輝かせながらそう言った。その子は、エメラルド本人だった。