第9章 捨てられ船
「あれは…」
私はその光に見覚えがあった。それは先程、ころが出した技に似ていたからだ。しかし、威力は断然その光の方が上。
「何っ!?」
光はフローゼルへと当たり、いくつもあった巨大な風の渦が消滅した。私はその衝撃で体が浮くのが分かり、ズズが引っ張ってくれなかったら顔を強打していただろう。
「っ!?」
衝撃がおさまった後も船は揺れ続けた。私はルビーたちを見た。3人とも海に落ちていなかった。太い柱を必死で掴み、落下を防いだようだ。
「……ぼ、僕達……助かった?」
ルビーの呟きで、私ははぁーっと息を吐いた。あの衝撃で、空を飛んでいたイズミとウシオは飛ばされてしまったし、あの様子ではフローゼルも戦闘不能だろう。
「…ズズ、ありがとう。もういいよ………ズズ?」
ズズは空を見ていた。空は青々としており、フローゼルたちがいた船の最上部には……揺れる影が…………!?
「飛び込め!!」
私がそう叫ぶのと同時に何度目かになるか分からない衝撃が、私たちを襲った。船は壊れ、体が自分の意志とは関係なしに吹き飛ばされる。
「言ったでしょ? 逃がさないって」
ただ唯一、まもるをしていて無事だったイズミが、ひんしギリギリのフローゼルの横で高笑いをしている姿。それを最後に、私は意識を手放した。