第9章 捨てられ船
「………うぼろろろろろ!!」
「また吐いてるの?もう慣れたら?」
「な……れるわけない……だ……うっ!!」
船と相性が本当に悪いらしいルビーと、二つ目のジムのバッジを手に入れて上機嫌のサファイア。2人の会話聞きながら、私はポケモンたちを見ていた。ズズはのんびりと日向ぼっこ、ころとえなは優雅にお昼寝、そしてハギ老人とそのポケモンキャモメのぴーちゃんは2人でいちゃいちゃ。正直あの容姿でそんなデレデレの顔されても怖いだけだと思うんだけど……なんか幸せそうだからいっか。そんな私は1人甲板に体育座りでぼーっと海を眺めていた。
「………ツワブキダイゴか」
コーポレーションの社長の息子のボンボン。石の採集が趣味の強い人。その人が別れの最後に口にした言葉は
「いつかきっとまた君たちに会えるだろう。そのとき戦おう。僕も君に興味があるからね」
それは恐らくサファイアに言った言葉なのだろうけど、何故か胸が高鳴った。久しぶりの感触だった。同時に私は自分自身を嫌悪し、ポケモンたちに戯れるわけもなく、ただ1人ぼんやりとしているわけなのだが……
「ころ……えな……ズズ……」
私は残り3つのモンスターボールを見た。各自好きなことをしている。外に出る気は全く無さそうだ。3匹のうち1匹は度々夜に外に出してあげているのだが、後の2匹はここ何年か出していない。…………大丈夫かな?出した時にガリッガリ……もしくはでぶっちょだったらどうしよ。
「ズ?」
自分の想像にゾッとしていたら、いつの間にかズズが私のそばに来てキョトンとしていた。どうやら自分の名前が呼ばれたのに反応したらしい。全く従順な子だこと。付き合って日が浅いズズだけど、私のことを一番に考えてくれる。いいパートナーに巡り会ったものだ。状況に合わせて臨機応変に対応する2匹とはまた別のタイプだ。
「お前はいい子だなぁ」
ぎゅーっと抱きしめてやると、嬉しそうに私の顔を舐めるズズ。あー!癒される