第11章 カイナシティと母親
「ま、行くなと言われて、わざわざ首を突っ込むような真似はしないって」
ねぇ? とズズに問いかけると、ズズはのほほんとした顔でえ?と首を傾げた。まったく、進化しても呑気っ子なところは変わらないようだ。
「さて、ルビーやサファイアを探しますか」
私は周囲を見渡した。流石に港町とあってか、人がガヤガヤと賑わっている。
「………この中から探すのは面倒だなぁ…」
「バウっ!!」
私はとりあえずえなを出した。久しぶりに人探しをやってもらいますかね。えなは1度嗅いだ匂いは忘れないし。ルビーやサファイアの匂いが残ってないか調べてもらおう。
「バウっ!!」
「流石」
早速見つけたようで、スタスタと歩き始めるえな。潮風もあり心配だったが、匂いが残っているということはここ数日までいたということになる。私はえなに続いていくと……
「…………やっぱりここに着くのね」
そこは、何かが暴れたような痕跡があるほぼ壊滅状態の建物だった。元の建物は随分立派そうなのだが、今では見るかげもない。
「…………ふたりの痕跡はここで終わってるの?」
つまり、状況証拠から考えればサファイアがここを壊滅させたということになるが……。しかし、私はすぐにその考えを却下した。何故なら、この建物の状態に私は見覚えがあったからだ。
「…………えな。私はルビーとサファイアを探して欲しかったんだけど……」
後ろに気配を感じ、私は苦い顔をして振り向いた。そこにいた人物は、軽い足取りでにこやかな笑みを浮かべこちらに歩いてきていた。
「久しぶりエメちゃん。もう気づいちゃったの? やっぱりそういうところ、お父さんにそっくりね」
「………母さん」
父親に遭遇しないだけマシだと思いたい。だが、母の後ろには相棒のバンギラスがこちらをジロリと見つめている。
温厚な母がバンギラスのヨギちゃんを出している時……それは時にクソ親父以上に厄介なこともあった。