第5章 風邪 / カイト
「……やっちまった」
広い床に敷かれた柔らかい布団の上で、オレはうなだれた。
そう。
風邪をひいたのだ、ガラにもなく。
「ぐぁ~~頭が痛む…」
我ながら驚いた。
風邪をひくのなんて何年ぶりだろうか。
……何か変なものでも食っちまったか?
いや、それよりも心配なのが、
「…」
そういえば朝メシも作ってやれなかった。
今日の分のまき割りも洗濯もしていない。
と過ごしてもう1ヶ月ほど経つが、こんなこと初めてだ。
腹を空かせてるんじゃ……今ごろ外にでも遊びに行ってるだろうか。
………あぁ!心配だ!!
「カイト~」
「!!…」
そんな心配をしていると襖の奥からが覗いていた。
外で泥遊びでもしていたのか、服や顔に土がついている。
「かぜひどい?だいじょうぶ?しんどい?」
「…あぁ、結構しんどいが大丈夫さ」
といっても起き上がる力もない。
「あのね、おみずくんできたからのんで。あとひえぴた」
「冷えピタあったのか」
水をもらい、ありがとうと伝えるとはふにゃ~っと笑う。
癒されるな。
「ひえぴたはるよー」
ひやり、とおでこに気持ちのよい冷たさが伝わる。
「きもちいい?」
「あぁ、だいぶ楽になった……朝メシ作ってやれなくてごめんな」
「あ、わたしはだいじょうぶだよ!さっきじねんじょほってきたから」
「じねんじょ掘ったのか!?」
だからこんなに土まみれになって……
どこの職人なんだお前は。
「うん。だからカイトにあげようとおもったんだけど…ごはんたべれそう?」
「………」
気持ちに応えてやりたいところだが、どう頑張っても今は食欲がない。
もそれに気づいたのか、飲み水の入ったボトルを2本ほど置いて"またくるね"と去っていった。
「く、くそ……こんな風邪ひいてなければを思いっきり褒めるのに」
早く治れ!オレの風邪っ!!