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【ヘタリア】Jasper Green【短編集】

第4章 Vertrag 普


怖くないのか?なんて聞けない。
なんでお前はそんなに強いんだ?なんて聞けない。

だって答えは解ってるから。

いつも通り、白い八重歯を見せて言うんだ。


「俺様は最強だからな!」

「っ……」


本当は怖いくせに。強がり。
なんとなくわかる。

何年一緒だと思ってんだよ。


「はぁ…っ、行くか…」

「えっ…?」


一瞬の間に、腕の中にいたギルベルトは俺の前に立っていた。

ボロボロの体を引きずり、魔法で武器を出すと構える。

なにやってんだ

なにやってんだ?


「おい…ギルベルト!!なにやってんだよ!!逃げるぞ!!」

「あ?何って…いつもの魔女狩りだろ? 逃げる?何言ってんだよ。それはお前の役目だ」


そう言いながら、自分の首にかけていた何かをブチッと引っ張った。

それを俺に。


「ロザリオ、持っててくれ。無くしたら殴るからな。そんで俺が帰ってきたら返せ。」


帰ってこれる保証なんて何処にもないのに。

自分で死ぬってわかってて、何でこんな約束するかな。


「んな顔すんなよ。大丈夫、お前を置いて死なねーさ」


いつものように笑って、かっこつけて。


「不死身のギルベルト様だ。必ず戻ってくる。」


いつまでもロザリオを受け取らないでいると、強い力で腕を引っ張られる。

さっきまでは俺が抱きしめていたのに、今回は逆。

男らしい胸板に顔を埋めると香水と汗と血の匂い。


「…ほら、」


仕方なく手を出すとロザリオが手のひらに落ちた。
ギルベルトがずっと握っていたからか、生暖かい。


「んじゃ、Viel Glück
(んじゃ、幸運を祈る)」

「…Es was
(…そっちもね)」


声が、震える。自分でも笑いそうなほど情けない声音。

俺の顔を見てギルベルトはいつも通りけせっと笑った。

悪ガキみたいに、無邪気な笑顔。


「けっせっせ、なに泣いてんだ」


そしてもう一度強く、抱きしめてくる。

弟より細い彼の腕は、二度と離すまいなんて言うように俺をがっちりと抱きしめる。


「 Ich liebe dich für immer. 
(お前を永遠に愛してる。)」


血で喉をやられ、掠れた声で吐き捨てた言葉。

俺が返事を返す暇もなく、ギルベルトは俺の肩を魔女とは逆の方向に向かって強く押した。
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