第4章 Vertrag 普
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「……」
眩しい光に気がついて目を開けると、俺は廃墟の真ん中に寝っ転がっていた。
重たい体を起こして周りを見渡す。
東側は朝日でステンドガラスが色とりどりに光っている。眩しかったのはこれのせいらしい。
正面は崩れたひな壇ともう僅かに跡形を残しただけの十字架とパイプオルガン。
でも、どこか懐かしい場所。
…ああ、そっか。ここ、よくギルベルトと来てた教会だ。
少しだけ切れて、肩から出ている血を手で押さえながら十字架の前に移動し、座る。
あの後、ギルベルトと魔女はどうなったのだろう。
魔法使いの中でもチート並みの魔力を持っているあいつは、今でも互角で戦っているのだろうか。
それとも一旦退いて、改めて作戦をねっているのだろうか。
それとも…
「…気になるのかい?」
その声に驚いて見渡すと、半壊のベンチから声の正体は顔を出した
。
真っ白い身体に長い耳を生やした、謎の生物。
「僕の正体はわかる?」
「…incubator」
こいつこそ、魔法使いを生み出す元凶、incubator(インキュベーター)。
「僕が見えるってことは、君も力を必要としているってことだよね。」
「…」
「彼は…ギルベルトは強い。僕もあんなに強い力を持ってるなんて思わなかったよ。多分、この都市で一番強いんじゃないかな?
だからこそ、敗れてしまったんだね。」
「…どういうこと?」
「彼は迷ってたんだ」
白いソイツは軽やかに段差を乗り越え、十字架の端に登る。
「途中までは辛勝だった。彼も馬鹿ではないから、事前から練っていた作戦のおかけで順調だったよ。
あの魔女の弱点を狙って、もう少しで勝てそうだった時、突然彼の魔法が解けちゃったんだ」
長くてふわふわな尻尾を揺らしながら、再び軽やかに俺の足元に移動した。
「その事態に彼は戸惑う事しかできなかったんだろうね、暫くは魔女の攻撃に逃げることしか出来なかった。
今回、彼の魔法が解けた理由には…ローナ、君が大いに関係してるよ。」