第19章 J'ai de la fièvre. 仏
(あー…寝れるわ、これ)
風通しも良くて静かで、廊下ってこんなに天国に近かったのか、なんで今まで気付かなかったんだ。
まあ欠点は寒すぎなとこか。
(ちょっときゅーけー…鐘なる前に起きればいいよな…)
保健室の文字が書かれた看板が見えるのにチカチカし始めた視界を閉じると、まるで死ぬように俺の意識は途絶えた。
途絶える前、誰かの声が聞こえたのは気のせいか。
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「ってー…あんのヤンキー眉毛…手加減ってもんを知らないのかね」
久しぶりの殴り合いまでに発展した喧嘩で結構な傷を負った俺は手当するため保健室に向かっていた。
最後に喧嘩したのは数年前だったから体が訛ってたみたいで、あの眉毛が繰り出した拳をモロに浴びて今出血中。
「ほんっっと、俺の美貌が台無し…ん?」
口元を押さえながらブツブツ愚痴を言っていると、金色の何かが見えた。
多分金色毛虫だ、きっとそうだ。なんて意味のわからない期待を抱きながら近づくと、
「って…ローナちゃんか」
先程まで殴り合いをしていた眉毛の妹だった。
「なーんだ、びっくりしt…ちょ、え?」
冷静なって考えると廊下で寝てるなんてただ事じゃないことに気がついた。
仕方ないじゃない、いつも予想外なことばっかおきてるんだから。
起こしてあげようと近くによると、息が荒いのと顔色が悪い様子が伺える。
汗が伝っている首に手の甲を当てると、熱い体温が俺に伝わった。
「…無理するから」
ため息をつきながら身体を抱き上げると変わらない重さに微妙な気持ちになった。
このままおとなしく寝てて欲しいけど…警戒心強いから…
「ってめえ!!はなせこの髭っ!!」
「ああ起きちゃった…」
今のは明らかにフラグだったけど触れないで。
ジタバタ暴れるローナをなんとか持ち堪えて、すぐそばの保健室のベッドに寝かせる。
しかし、そう簡単には寝てくれないみたいでまるで幼児のように駄々をこね始めた。
それがなかなか、いや、とてもうざい
棚から出した体温計を脱脂綿で消毒してから渡す。
「はいローナゃん、計って」
「やだ」